火事に遭いました 2
「そうだ。妹に金を借りよう。」と考えたが、10円すらなかったのである。帰り支度をしていた消防士に、声をかけた「知人に電話したいんですが、お金がないんです。10円下さい。」 10円をいただいたが恥ずかしくてその時の消防士さんの顔をまともに見れなかった。お礼は言ったと思う。「消防士さん ありがとう。」
その時、拒否されていたら、僕は、中野まで歩いて行かなくてはならなかった。しかも、妹のアパートもはっきりとは覚えていなかった。
中野に住んでいる妹に電話し、事情を話すと、妹が来てくれた。兄弟のありがたさをこの時初めて知ったかな?無惨に焼け焦げたアパートと僕のすすまみれの顔を見た妹は、世界一不幸な人に声をかけるように言った。「とりあえず私のアパートに行こう。」 僕は、無言で妹についていき電車に乗り中野のアパートに行った。
妹が「兄ちゃん、焼け跡のにおいがする。風呂入って流したら。」と言われてすごすごと入ったのである。しかし、この焼け跡のにおいは僕の体に染みついていて1カ月ほどとれなかったのである。
夕食をいただいて、腹が落ち着くと現実に戻って考えざるを得なくなった。さて、どうしようか?
続く
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